研究業績

2014/12/26

睡眠時無呼吸に対するASV治療に関する症例報告出版のお知らせ

これまで、心不全に伴う睡眠時無呼吸に対するASV治療に関する知見は、中高年の入院患者を対象としたものであり、限定的なものでした。本研究では、ASV治療の有用性をさらに幅広く検証するため、在宅医療現場における後期高齢者を対象として、心不全に伴う睡眠時無呼吸の診断からASVの導入とその治療に対する評価を行いました。その結果、ASV治療は在宅医療現場における後期高齢者に対しても有効に使えることが示唆されました。

山崎賢士,藤井基弘,藤井弥子,津田敏秀,鈴木越治.
在宅医療現場における心不全に伴う睡眠時無呼吸に対するASV治療.
[ASV treatment for sleep-disordered breathing with heart failure: an application in a home care setting].
日本プライマリ・ケア連合学会誌. 2014;37(4):342-345.
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2014/12/27

母乳育児と子どもの喘息入院との関連に関する論文掲載のお知らせ

母乳育児が長期的に子どもの健康に好影響をもたらすことが明らかになってきましたが、喘息に対しては未だ明確な結論が出ていません。そこで、私たちは日本の大規模な調査データを用いて、母乳育児が長期的に子どもの喘息入院とどのように関連しているかを検討しました。その結果、母乳育児が、生後6か月から42か月(3歳6か月)の子どもの喘息入院に予防的な影響をもたらしていることが確認されました。

Michiyo Yamakawa, Takashi Yorifuji, Tsuguhiko Kato, Yoshitada Yamauchi, Hiroyuki Doi.
Breast-feeding and hospitalization for asthma in early childhood: a nationwide longitudinal survey in Japan.
Public Health Nutr. 2014 Nov 6:1-6. [Epub ahead of print]

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2014/12/27

大気汚染曝露と満期低出生体重児の関連に関する論文掲載のお知らせ

大気汚染曝露と様々な出生児のアウトカム(低出生体重児、早産など)に関する知見は集積されてきていますが、今までの研究はある地域に限局されたものや大事な交絡要因を調整できていないものが多くあります。そこで、私たちは、日本の大規模な調査データを用いて、妊娠中の大気汚染曝露と満期で産まれた児の低出生体重児との関連を検討しました。その結果、大気汚染曝露が満期の低出生体重児を増加させていました。

Takashi Yorifuji, Saori Kashima, Hiroyuki Doi
Outdoor Air Pollution and Term Low Birth Weight in Japan
Environment International 2015;74:106-111

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2014/12/27

大きな道路近傍への居住と出生時アウトカムに関する論文掲載のお知らせ

大気汚染曝露が早産や低出生体重児のリスクを上昇させると考えられています。今回は、そのような状況の中、大きな道路近傍への居住と妊娠経過中の母体合併症との関連を検討いたしました。結果として、大きな道路近傍の居住者の方が妊娠高血圧症候群や37週以前の前期破水が多くなっていました。母体自身への影響だけでなく、大気汚染曝露と早産の関連のメカニズムの一部を説明していると考えられます。

Takashi Yorifuji, Hiroo Naruse, Saori Kashima, Takeshi Murakoshi, Hiroyuki Doi.
Residential Proximity to Major Roads and Obstetrical Complications
Science of the Total Environment 2015;508:188-192

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2014/11/29

Epistasis(遺伝子相互作用)に関する書籍出版のお知らせ

異なる遺伝子座間の相互作用が一つの形質に影響することがあります。このことに関連して、1909年に、遺伝学者の Dr. William Bateson は、ある遺伝子座の遺伝子型によって別の遺伝子座の遺伝子型の発現が抑えられる現象のことを、エピスタシス (epistasis) と呼びました。その後、エピスタシスという用語は、より広範な意味で用いられるようになり、一般に、遺伝子相互作用を指す用語として認知されています。

この度、Springer の Methods in Molecular Biology シリーズから、エピスタシスに関する最新の知見をまとめた書籍「Epistasis: Methods and Protocols」が出版されました。その第11章「Compositional Epistasis: An Epidemiologic Perspective」では、疫学理論の観点からエピスタシスを論じています。特に、反事実モデル (counterfactual model) の観点からエピスタシスを同定する十分条件などについて論じています。

疫学的な視点が、遺伝子・分子・細胞などのミクロのレベルにおけるメカニズムを明らかにするうえで有用であることを示す上で、本文献が役立つことも期待されます。

Suzuki E, VanderWeele TJ.
Compositional epistasis: an epidemiologic perspective.
In: Moore JH, Williams SM, eds. Epistasis: Methods and Protocols, Methods in Molecular Biology, vol. 1253, DOI: 10.1007/978-1-4939-2155-3_11, New York, NY: Springer, 2015: 197-216.
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2014/11/29

因果律に関する発表(@京都国際統計会議)について

2014年11月17日から18日に国立京都国際会館で開催された京都国際統計会議 (Kyoto International Conference on Modern Statistics in the 21st Century) の Invited Session: Causality で、因果律に関する発表を行いました。

Suzuki E, Tsuda T, Yamamoto E.
Sufficient-cause model and potential-outcome model.

因果律の主要なモデルである十分原因モデルと潜在アウトカムモデルの紹介を行い、これら二つのモデルの関連性について発表を行いました。主に、以下の論文の内容について焦点を当てた発表でした。

Suzuki E, Yamamoto E, Tsuda T. On the relations between excess fraction, attributable fraction, and etiologic fraction. Am J Epidemiol. 2012;175(6):567-575.

会議開催のためにご尽力いただいた関係者の方々、および、議論に参加していただいた皆様に深く御礼申し上げます。


2014/10/9

大気汚染曝露と心停止による救急搬送の関連に関する論文出版のお知らせ

最近、大気汚染物質曝露の健康影響が懸念されており、国内でも大気汚染物質への急性曝露と疾病別死亡の関連は評価が行われ、関連が指摘されてきています。しかしながら、疾病罹患との関連を検討した研究、特に心停止との関連を検討した研究は海外でも少なく、さらに大気汚染物質曝露と疾病罹患との関連の検討を行う際に、日単位の解析ではなく、毎時変動の影響を検証し考えられる有害作用を実証した疫学研究はごくわずかです。

本研究では岡山市の救急搬送データを利用し、症例発生前の異なる4期間(0-24時間、24-48時間、48-72時間、72-96時間)の大気汚染濃度を平均し、その影響の評価を行いました。結果として、濃度がIQR(四分位範囲)分増加する時のオッズ比は、発症から48–72時間前の浮遊粒子状物質曝露で1.17 (95% CI: 1.02–1.33)、72–96時間前のオゾンで1.40 (95% CI: 1.02–1.92)、24–48時間前の二酸化窒素曝露で1.24 (95% CI: 1.01–1.53)、48–72時間前の二酸化硫黄曝露で1.16 (95% CI: 1.00–1.34)となっており、浮遊粒子状物質、オゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄の曝露が心停止のリスク上昇と関連していました。

Yorifuji T, Suzuki E, Kashima S.
Outdoor air pollution and out-of-hospital cardiac arrest in Okayama, Japan.
Journal of Occupational and Environmental Medicine. 2014;56(10):1019-1023.
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2014/10/9

大気汚染曝露と呼吸器疾患による救急搬送の関連に関する論文出版のお知らせ

2006年にWHOより出版されたWHO Air Quality Guideline Global Updateによると、短期曝露、慢性曝露共に呼吸器・心血管系の死亡の増加、呼吸器・心血管系疾患の罹患の増加、生理的機能への影響を引き起こすとされています。しかしながら、疾病罹患との関連を検討した研究は国内では少なく、また大気汚染の曝露と呼吸疾患の関連が時間単位でどうなっているかの検証は、ほとんどなされていません。

今回の研究においては、大気汚染の短期影響に着目し、大気汚染と呼吸器疾患発症との関連評価を行いました。本研究では岡山市の救急搬送データを利用し、症例発生前の異なる期間の大気汚染濃度を平均し、その影響の評価を行いました。結果として、発症の24-72時間前の浮遊粒子状物質曝露、発症の48-96時間前のオゾン曝露が呼吸器疾患の発症と関連していました。濃度がIQR(四分位範囲)分増加する時のオッズ比は、浮遊粒子状物質24-48時間前に関しては1.05 (95% CI: 1.01, 1.09)、オゾン72-96時間前に関しては1.13 (95% CI: 1.04, 1.23) でした。肺炎とインフルエンザに関しては0-24時間前の二酸化硫黄曝露が関連しており、オッズ比は1.07 (95% CI: 1.00, 1.14) でした。一方、慢性閉塞性肺疾患に関しては、結果ははっきりしませんでした。

Yorifuji T, Suzuki E, Kashima S.
Hourly differences in air pollution and risk of respiratory disease in the elderly: a time-stratified case-crossover study.
Environmental Health. 2014;13:67. (doi: 10.1186/1476-069X-13-67)
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2014/6/5

交絡の異なる観念を明らかにすることの重要性を指摘したレター出版のお知らせ

Epidemiology 2014年1月号で、米国コロンビア大学のDr. Gattoらが、疫学における因果効果に関する組織的なスキーマを提唱する総説論文を出版しました。この度、その論文に対するレターが Epidemiology に出版されました。

これまであまり認識されていない点ですが、交絡 (confounding) には、confounding in measure と confounding in distribution という二つの異なる観念があります。前者の観念では交絡の有無は指標に依存する一方で、後者の観念では交絡の有無は指標に依存しません。どちらの観念が用いられているかによって、交絡が存在しないことの十分条件も異なることになります。本レターでは、これらの観念の違いを明確に理解することにより、因果効果に関する組織的なスキーマを精錬できることを論じています。

本レターが、因果概念のさらなる理解に寄与することを期待しています。

Suzuki E, Yamamoto E.
Further refinements to the organizational schema for causal effects.
Epidemiology. 2014;25(4):618-619.
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レターの対象となった総説論文
Gatto NM, Campbell UB, Schwartz S.
An organizational schema for epidemiologic causal effects.
Epidemiology. 2014;25(1):88-97.
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著者らの回答
Gatto NM, Campbell UB, Schwartz S.
The authors respond:
Epidemiology. 2014;25(4):619-620.
本論文へのリンク


2014/6/18

交絡などの因果概念を効果的に教えるための例に関するレター出版のお知らせ

Annals of Epidemiology 2013年12月号で、ミネソタ大学のDr. Maldonadoが、疫学における因果概念に関する教育的論文を出版しました。その論文では、4つのライトを用いたシンプルな例により、交絡 (confounding) などの因果概念を説明することが提唱されています。この度、その論文に対するレターが Annals of Epidemiology に出版されました。

Dr. Maldonadoが用いた例はシンプルではあるものの、交絡の概念や directed acyclic graph (DAG) の活用方法に関する混乱や誤解を生じさせることが懸念されます。本レターではその点を、以下の三つの観点から論じています。

  1. 交絡の概念を効果的に教えるためには、全集団をターゲットとした場合の因果効果を論じることが望ましい。(このことにより、confounding in measure と confounding in distribution という二つの観念の違いが明確になる。)
  2. Dr. Maldonadoの例では、曝露状況がどのように生じたのかに関する背景が説明されていない。(そのため、confounding “in expectation” と “realized” confounding という二つの観念の違いが明確にされていない。)
  3. Dr. Maldonadoが示しているDAGは、用いられている例を正しく描出していない。

本レターが、因果概念のさらなる理解に寄与することを期待しています。

Suzuki E, Mitsuhashi T, Tsuda T, Yamamoto E.
A simple example as a pedagogical device?
Ann Epidemiol. 2014;24(7):560-561.
本論文へのリンク

レターの対象となった論文
Maldonado G.
Toward a clearer understanding of causal concepts in epidemiology.
Ann Epidemiol. 2013;23(12):743-749.
本論文へのリンク

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