概要

2020/3/17

教授より御挨拶

2019年8月1日付けで疫学・衛生学分野教授を拝命した頼藤貴志(よりふじたかし)です。当疫学・衛生学分野は、1922年に緒方益雄初代教授により、衛生学講座(1922-2000年度)として新設され、その後時代の要請に応え、衛生学・予防医学分野(2001-2007年度)、疫学・衛生学分野(2008年度-)と名称を変更してきました。森永砒素ミルク中毒事件、プライマリ・ケア、メンタルヘルス、公衆衛生学コース(Master of Public Health Course)など、その時代の公衆衛生上重要な問題に取り組み、先駆けとなるような活動を行ってまいりました。詳しくは、同門会の項をご覧ください。

さて、当教室の分野名にあります疫学とは、医学における基礎的方法論の一つであり、集団のデータを用い、疾病の分布を描写したり、原因と結果(疾病など)の関連、即ち因果関係を追及・定量化したりする学問です。医学の様々な分野のテーマ(例:小児科、内科など)が横軸だとしますと、疫学などの基礎的方法論は縦軸であり、それらが交差したところに研究が生じます。その為、我々の教室は疫学を共通言語とし、医学・公衆衛生学全般、特に疫学理論、産業保健、環境保健や小児保健、また臨床研究のサポートなど医学における幅広い分野に関わった研究を行っています。

また、教育におきましても、疫学を柱とし学部や大学院教育に関わっています。学部教育では、とかく臨床医学に目が行きがちな医学生に医学を幅広い、また疫学的な視点で見るパブリックヘルスマインドの醸成を目的とし教育を行っています。また、大学院教育では公衆衛生学コースや博士課程の教育を通し、医師を始め様々な医療関係者を対象として、疫学・医療統計学の素養の醸成や仮説立案・分析・論文化ができる医療人育成をめざしております。

最後になりますが、水俣病に生涯関わられた、私の恩師の故原田正純先生が「現場を忘れた疫学はきらめきと真実を見失う」とおっしゃっていました。疫学とは、現場に根差し仮説を立案し、そこにある医療や医学の真理を追究する時こそ力を発揮するものだと思います。少子高齢化やグローバライゼーション、リアルワールドデータの集約など医学・医療を取り巻く状況は大きく変わろうとしています。そのような状況の中、疫学が果たすべき役割は益々大きくなるのではないかと思います。同門の諸先輩方の伝統を引き継ぎ、疫学を軸に日本や世界の医学・公衆衛生に貢献できたらと考えております。そしてそれは岡山大学が取り組む「持続可能な開発目標(SDGs)」の1つである「3.すべての人に健康と福祉を」に貢献するものであると考えます。今後も教室員共々ご指導頂けましたら幸いです。

2020/3/17

教室紹介

教室の理念

教室の柱とする疫学・生物統計学を用いて研究を行い、国内・世界の医療・保健・福祉分野への貢献を目標にしています。日本ではまだまだ公衆衛生学・公衆衛生活動というのは重視されていない分野かもしれませんが、院生が安心して自由に学べる雰囲気を提供し、自ら考え研究し公衆衛生活動に参加していける人材を育てています。また学部教育では、公衆衛生マインドの醸成、データサイエンスの素養の育成を目標とします。その他、臨床研究支援体制を通した研究の質の向上と人材育成を目指します。

教室で学ぶこと

疫学
人を対象とした医学研究の基本的方法論で、因果関係の追及・定量化を目指す学問です。人間(医療)の関わる問題全てに対して、原因と結果の関連を定量化する学問で、論理的思考と医学研究の考え方を学んでいます。データサイエンス時代に必須の方法論と言えます。

生物統計学
医学研究で用いる統計方法論全般的に勉強します。生物統計学専門の先生との勉強会も行っています。

研究テーマ

スタッフ・院生それぞれ多岐に渡ります。

疫学理論・解析方法論・社会疫学・環境疫学・小児周産期保健・産業保健・国際保健・疫学研究全般(臨床研究、地域医療・保健、災害医療、医療ビッグデータベースなど)。疫学的手法を用い、医療に関連する全ての分野を網羅しています。
   

2020/3/17

主な研究内容

疫学理論、解析方法論
 医学研究の基盤となる因果論の構築。マルチレベル分析学の理論的研究・応用

社会疫学
 近年拡大している健康格差の問題を、社会学や経済学などを含め多面的に検証

環境疫学
 大気汚染、水俣病、ヒ素中毒などによる健康影響の評価

小児・周産期保健
 大規模データベースを利用した小児の諸疾患や発達の多様性に関する分析

産業保健
 職場のソーシャル・キャピタルやソーシャル・ネットワーク。産業医活動

国際保健
 海外のフィールドワークと海外データベースを利用した疫学研究

その他、疫学研究全般
 臨床研究、地域医療・保健、災害医療、医療ビッグデータベースなど

2022/11/29

アクセスマップ

鹿田地区への交通案内

キャンパス内建物配置図(立体)



11番の建物が「基礎研究棟」です。
研究室は、7階にあります。

2023/5/16

疫学・衛生学分野のロゴマークについて



2022年11月に、当講座のロゴが完成しました。

(ロゴマークコンセプト)
■医学の様々な分野のテーマ(横軸)と、疫学などの基礎的方法論(縦軸)を表現し、それらが交差したところに「研究」が生じる様子
■(デジタル)数字をイメージし、データサイエンス、リアルワールドデータ(臨床現場)及び因果関係を追及・定量(数値)化する疫学を表現
■世界共通の文字である(デジタル)数字を表現することで、グローバルな活動を表現
■人のデータを使用する疫学の特性から漢字「人」を表現また多職種の専門家(薬剤師、理学療法士など)が集まり研究する様子や人材ネットワーク、双方向コミュニケーションを表現
■中央部分に「+」「×」をイメージし、多種多様な研究要素や人材を加算及び乗算することで、新たな方法論やソリューションを導きだし、人々の暮らしに貢献していく様子

グラフィックデザイナー/田中雄一郎(クオデザインスタイル)

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